睡眠を支配する2つの仕組み

気温もグンッと下がり、日照時間も短くなりました。この季節になると「寒くて眠れない」「朝起きられない」「夜中に起きてしまう」などのお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか?質の高い睡眠は生活習慣病の改善や心の健康にも良い影響を与え、生活の質の改善につながります。では睡眠はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?

眠気を引き起こすメカニズム

睡眠にとって欠かせない眠気は2つの仕組みによって支配されます。それは「疲れると眠くなる仕組み」と「夜になると眠くなる仕組み」。まず「疲れると眠くなる仕組み」とは起きている時間が長くなるにつれ、体に疲労や睡眠を引き起こす物質が蓄積され眠気を引き起こす力が高まるというものです。この力を睡眠圧といいます。「睡眠圧」をししおどしで例えてみなしょう。

起きている状態がししおどしが上向きの状態で、眠っている状態がししおどしが下向きの状態です。起きている間はししおどしが上向きとなり、そこに睡眠圧という水がどんどん注がれています。この睡眠圧が十分にししおどしの中に溜まると眠気が誘発され眠るようになります。するとししおどしが下向きになり、溜まった睡眠圧が一気に放出されて、再びカコンッと上がり眠気がリセットされるのです。では、水に例えた睡眠圧の物質は一体何なのでしょうか?それはスニップスという脳の中の80種類のたんぱく質の化学変化だと言われています。

私たちが起きている間、脳ではスニップスと呼ばれているたんぱく質が、リン酸化していると考えられています。スニップスのリン酸化が進むにつれ眠気もどんどん強まり、寝る事でリン酸化された物質がリセットされ元の状態に戻るのです。

次に夜になると眠くなる仕組みについてです。私たちの脳と臓器には約24時間周期でリズムを刻む体内時計が備わっています。朝起きて夜になると眠るというリズムはこの体内時計によって生み出されます。

体内時計は光刺激とメラトニンというホルモンが連動して睡眠の状態と起きている状態をコントロールしています。まず、日中に光を浴びると眠りを誘発するメラトニンというホルモンの分泌が抑えられます。さらに深部体温が上昇し、心身の緊張を高める交感神経が優位になることで活発に活動できる状態になるのです。そして夜になると昼間おさえられていた分、脳の中の松果体からメラトニンの分泌が急速に高まります。

また脳をクールダウンさせるために深部体温が下がり心身をリラックスさせる副交感神経が優位になります。それにより休息や、睡眠に適した状態へと自動的に切り替わり昼夜のリズムができていきます。良質な睡眠にはこうした体内時計によるリズムを乱さない事がとても重要です。

睡眠の質にも影響?脳と腸の繋がり

私たちの睡眠は体内時計に左右されていることをお伝えしましたが、実は人間の身体には大きな体内時計と小さな体内時計があります。大きな体内時計は脳が司り光を見ることによって体内時計を調整します。もう一つの小さな体内時計とは胃腸などの消化器官になります。

1日3回の食事も体内時計の調整に役立ちます。また深い眠りに関係しているメラトニンですが、このメラトニンの生成には必須アミノ酸の1つのトリプトファンという栄養素が必要になります。実はトリプトファンは食品からしか摂取することができません。トリプトファンの元となる肉や魚、乳製品、大豆などに含まれるたんぱく質が体内に入ると腸内細菌がたんぱく質を分解合成し、トリプトファンを作り出します。トリプトファンの一部が脳内に運ばれ脳内のセロトニンの濃度が上がります。

セロトニンは松果体でビタミンB12の作用を受けメラトニンが合成されます。腸内細菌の数が多く、善玉菌が優勢な腸内環境であるほど睡眠ホルモンであるメラトニンの材料を調達することができ脳内のメラトニン生成が活発になるため質の良い眠りに繋がるのです。

朝スッキリ超熟睡のための3つのこころがけ

体内リズムを整える

体内時計は太陽の光でリセットされます。本来の生体リズムで1日を快適にスタートするには毎日同じ時間に起きて朝日を浴びることがポイントです。また、同じ時間に食事をとることも重要です。腸の働きは自立神経を介してダイレクトに脳に伝わるため特に朝食を食べる事で、腸の蠕動運動が始まり体内時計のスイッチが入りやすくなります。

腸内環境を整える

睡眠ホルモンであるメラトニンの材料になるトリプトファンが作られる腸内環境にしていくために善玉菌を多く含んだ食品を摂る事も大切。そこでオススメなのがヨーグルトや味噌、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品です。漬物やキムチなどは乳酸菌を多く含む発酵食品で食物繊維もしっかり入っていますので整腸作用に大きな効果があります。

眠る環境を整える

温度や湿度、騒音や明るさは、睡眠に大きな影響を与えるため、熟睡するための環境作りはとても大切です。快眠のための寝室の温度は、夏は26℃以下、冬は16℃以上が目安といわれています。また明るさや騒音は快適な睡眠を妨げてしまうため、電気やテレビのつけっぱなしには気を付けて、就寝前にオフにする習慣を作りましょう。