秋冬に流行する「ノロウイルス」とは?
涼しくなる10月は、体調を崩しやすい季節。特に注意したいのが秋から冬にかけて流行する「ノロウイルス」です。感染すると、突然の嘔吐・下痢・発熱など、つらい症状に悩まされます。感染力が非常に強く、ご家族や職場内でも一気に広がることがあるため予防が何よりも重要です。
次の表は平成23年に発生したノロウイルスによる食中毒の全国データです。10月の発生件数と比べ、12月の発生件数が約7.4倍にも跳ね上がっているのがわかります。
※【出典】厚生労働省『食中毒統計 資料平成23年』国立国会図書館デジタルコレクション2012年刊

ノロウイルスの恐ろしい感染力
ノロウイルスは、極めて感染力が強く、わずかなウイルス量でも人に感染します。主な感染経路は経口感染で、加熱不十分な食品、ウイルスが付着した物に触れた手を清潔にせずに飲食をすることでも感染が広がります。感染後、24~48時間ほどの潜伏期間があり、嘔吐や下痢などの症状が急に現れるのが特徴です。
発熱・微熱

高い熱は出にくいですが、37~38℃程度の微熱が出る場合があります。発熱は体の免疫反応の一つで、感染初期にあらわれることが多いです。
全身のだるさ・倦怠感

発症と同時に全身のだるさを感じることがあり、動けないほどつらくなるケースもあります。特に高齢者・体力が低下している人・子どもは下痢や脱水のエネルギー消耗に注意が必要です。
腹痛・下痢・嘔吐

ノロウイルスの代表的な症状で、突然あらわれるのが特徴です。腹痛をともなう激しい下痢や嘔吐が続く場合は、水分補給が特に重要です。
流行時期に備える4つの感染対策
手洗いは最強の予防薬

こまめな手洗いとうがいがノロウイルス感染対策の第一歩。特に、調理や食事の前、トイレの後、外出から帰ってきた時は石けんを使って丁寧に手を洗うことで、ウイルスの体内侵入を大幅に防ぐことができます。手指の洗い残しがないよう、30秒以上かけてしっかり洗いましょう。
火のチカラでノロを撃退!

ノロウイルスは熱に弱く、85~90℃で90秒以上の加熱が効果的とされています。特に注意が必要なのが二枚貝。中心部までしっかり火を通すことで、ウイルスの感染リスクを減らせます。湯気が立っていても、中まで熱が届いているとは限りませんので、加熱不足の生食とならないよう注意しましょう。
洗い残しにご用心

洗浄や消毒が不十分で調理器具やまな板、ふきんなどにウイルスが残っていると、そこから感染するリスクがあります。使用後はしっかり洗浄し、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)などでの消毒がおすすめ。熱湯消毒も効果的です。ついサッと済ませてしまいがちですが、「洗ったつもり」を防ぐために丁寧に洗いましょう。
健康生活で免疫力UP!

ウイルスに負けない体づくりには、日頃からバランスのとれた食事と健康的な生活習慣が欠かせません。特に発酵食品や食物繊維を意識して摂ることで、腸内環境が整い、免疫力アップにもつながります。感染を防ぐには、内側からのケアも大切です。また、十分な睡眠、体を温めることで免疫力の低下を防ぎましょう。
ノロウイルスの流行ピークは?
ノロウイルスは、気温が下がり乾燥する11月~12月に流行のピークを迎え、特に学校や高齢者施設、飲食店では集団感染が起こりやすく、食中毒としての届け出も急増します。ウイルスが低温・乾燥に強く、手洗いや加熱が不十分だと感染が広がりやすいのが特徴です。
体調の変化に注意!早めの受診を
ノロウイルスは通常、1~2日で自然に回復する病気ですが、高齢者や子どもは脱水症状を起こしやすく、重症化するおそれがあります。嘔吐や下痢が続く場合、水分がとれない、ぐったりしているといった様子が見られるときは、無理せず早めに医療機関を受診しましょう。細かな体調の変化に注意を払うことが大切です。
教えてノロウイルスQ&A

Q.一度かかったらしばらく感染しない?
残念ながら何度でも感染します。免疫が長く続かず、型も複数あるため、同じシーズンに再感染する可能性もあります。
Q.アルコール消毒で効果はある?
一般的なアルコール(エタノール)ではノロウイルスは完全に除去できません。次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を使った消毒が効果的です。
Q.下痢止めは飲んでも大丈夫?
基本的にNGです。下痢は体の中のウイルスを出すための反応なので、止めてしまうと回復が遅れる可能性が。症状がつらい時は医師に相談を。
もしも感染してしまったら?
✓まずは安静にする

症状が出たら、まずは安静に。ノロウイルスの多くは1~2日で自然に回復します。また、特効薬はないため体からウイルスが無くなるのを待つしかないのです。
✓こまめな水分補給

嘔吐や下痢で体から水分と塩分が失われてしまいます。経口補水液やスポーツドリンクで少しずつでも水分を摂り、脱水を防ぎましょう。
✓感染を広げない

嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれます。処理する際は手袋・マスクを使い、塩素系漂白剤でしっかり消毒しましょう。