農作業の大切な目安だった?半夏生について知ろう

半夏生ってなんとなく聞いたことはあるけれど、よく知らないという方は多いのではないでしょうか。古くから農作業の大切な目安とされ、各地には様々な風習が今も残っています。それでは半夏生について詳しくご紹介していきます。

日本の生活に根付いた雑節

日本では古来、立春や夏至など中国から伝わってきた二十四節気とは別に、日本で生まれ親しまれてきた「雑節(ざっせつ)」という旧暦があります。雑節は日本独自の繊細で移ろいやすい季節を把握するための特別な暦日のことです。有名なものでは「節分」や「土用」があり、「節分には年の数だけ豆を食べる」「土用の丑の日にはうなぎを食べる」という習慣がよく知られていますよね。梅雨の終わりには「半夏生(はんげしょう)」があります。夏至から数えて11日目頃からの5日間が半夏生で、毎年同じ日ではなく太陽の位置によって決まり、2024年は7月1日から始まります。

【節分】 立春の前(2月4日頃)

豆まきをすることで邪気を払う。その年の恵方に向かって食べる「恵方巻」があり、縁起が良いとされている。

【彼岸】 春分・秋分の日と前後3日を加えた7日間

お墓参りをして花や線香をお供えし、ご先祖様に対して日頃の感謝の気持ちを込めて合掌する。

【社日】 春分・秋分の日に一番近い戌の日

春は土地の神様に豊作を祈願し、秋は収穫の感謝をする日。

【八十八夜】 立春から88日目(5月2日頃)

霜が降りることが少なくなり、茶摘みが行われる目安とされた。

【入梅】 芒種のあとの最初の壬の頃(6月11日頃)

梅雨入りの時期。現在は気象庁から地域ごとに発表される。

【半夏生】 夏至から数えて11日目(7月2日頃)

梅雨明けの目安で、田植えはこの日までとされていた。

【土用】 立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間

年に4回ある土を敬う期間。江戸時代に「夏の土用」にうなぎを食べる風習が生まれた。

【二百十日】立春から数えて210日目(9月1日頃)/【二百二十日】立春から数えて220日目(9月11日頃)

台風が多くなる時期で、農作物の被害を受けやすくなるころ。

半夏生は農作業の大切な目安

農作業を行う上で重要な意味を持つ半夏生は、田植えを終える目安とされてきました。天候不順などで作業が遅れたとしても、半夏生以降は田植えを行わないようにしていたそう。というのも、半夏生以降に植えられた稲は十分に実らず収穫には繋がらなかったそうです。「半夏半作」と言われ、平年の半分ほどの収穫量になってしまうから必ず田植えを終わらせよう、という目安にしていました。昔は養蚕などと兼業する農家も多く、田植機の無い時代の人々にとっては7月までかかってしまうくらい、田植えは大変な作業だったのです。

地域ごとの風習

関西地方では半夏生にタコを食べるそうです。タコの足が四方八方に伸びる様子にあやかって、「稲がタコの足のように根付きますように」との願いを込めて農家の人々が神様にタコをお供えしました。これに由来して、半夏生の時期にはタコを食べる習わしが生まれたと言われています。

福井県の一部の地域ではこれから夏本番という半夏生に、丸焼きの鯖を食べます。江戸時代、農作業で疲れた体を癒したり蒸し暑い夏を乗り切るためのスタミナ源として藩主が領民に奨励したのが始まりと言われています。

香川県では半夏生に労をねぎらってうどんを食べるそうです。昔は田植えが終わるころがちょうど麦の収穫時期と重なるので、収穫された麦を使ってうどんを打ち、農作業を手伝ってくれた人に振る舞うようになったのがきっかけだそう。現在は農業機械などが発達したので半夏生を田植えの目安とはしていないのですが、こうした昔の風習を残し、香川県製麺事業協同組合は7月2日を「うどんの日」として制定しました。さすが〝うどん大国〟香川県ですね。

梅雨から夏へ、季節の移ろいを感じて

半夏生の5日間は物忌み(ものいみ)の日とも呼ばれ、「天から毒が降る」「井戸に蓋をする」「この日に収穫した野菜は食べてはいけない」との風習が生まれたそう。農作業で疲れた体を休めたり、湿気が多くカビが生えやすい時期でもあるため、食中毒に気をつけるなどの先人の知恵だと考えられます。

半夏生は梅雨が終わり本格的な夏に向かう季節の節目です。季節の変わり目は体の不調を感じやすい時期なので、無理をせずゆっくりと過ごすのがいいですね。

【タコの簡単レシピ】半夏生にはタコを食べよう!

タコにはアミノ酸の一種のタウリンという栄養素が含まれており、夏バテ防止や疲労回復に効果があるので食欲がなくなるこの時期にぴったりの食材!タコを美味しく味わえる簡単なレシピをご紹介します。

タコときゅうりの酢味噌和え

<材料>
タコ きゅうり 酢味噌

<作り方>
①きゅうりはスライサーで薄く切り、塩をまぶして水気が出たら絞る。
②タコは薄切りにする。
③きゅうりとタコに酢味噌を和えたら完成。市販の酢味噌を使うと簡単です!

タコのガーリック炒め

<材料>
タコ にんにく2かけ オリーブオイル 塩こしょう

<作り方>
①タコは食べやすい大きさにカット、にんにくはみじん切りにする。
②フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ弱火にかける。
③香りが立ったらタコを加え炒める。塩こしょうで味を調えたら完成。

半夏生の呼び名の由来は2種類!?

「半夏生」とは花穂のそばの葉が半分白くなる特徴を持つドクダミ科の多年草です。葉が白くなる様がまるで化粧をしたように見えたことから「半化粧」と呼ばれました。やがて半化粧が半夏生になり「この花が咲くころ=半夏生」とするようになったと言われています。

また半夏生とは別に「半夏(ハンゲ)」別名カラスビシャクと呼ばれる植物もあり、梅雨明けの時期に多く見られます。そのため、梅雨が明けそうなこの時期を「半夏が生える時期」すなわち半夏生と呼ぶようになったのではと考えられているそうです。