様々な果実が実る6月。中でも梅はこの季節を代表する味覚のひとつです。出始めのころは青々とした少し硬めの青梅。だんだん黄色に色づいて香りも豊かになり、終盤ではオレンジ色がかり、よく熟した柔らかい梅へと変化していきます。そんな梅に宿る健康パワーや色々な楽しみ方をご紹介します。
体に効く、梅の力

梅といえば、口をすぼめてしまうような酸っぱさを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。この酸っぱさには、梅の実に含まれている「クエン酸」という成分が関係しています。クエン酸はレモンやグレープフルーツなどの柑橘類にも含まれている酸味の元となる成分で、疲労回復や免疫力アップ、食欲増進などに効果が期待できます。さらに、梅の酸味成分には唾液の分泌を促す働きもあり、夏バテなどで食欲が落ちてしまった時にも役立ちます。
この他にもポリフェノールやビタミンE、鉄分やカルシウム、各種必須ミネラルなど栄養成分が豊富に含まれています。抗酸化作用や普段の食事だけでは不足しがちなミネラルのなどの栄養素を補うことができ、美容にもうれしい食材です。
梅干しはもともと保存食のため、昔ながらの製法で作られたものは塩分濃度が高いのも特徴です。汗をたくさんかいた時や夏場の塩分補給にもぴったり!疲労回復と塩分補給に加えて、健康に必要な栄養素も補うことができる、まさに健康パワーが凝縮された長寿の1粒だと言えます。これからの季節に心強い梅干し、ぜひ1日1粒、皆様も食事に摂り入れてみてください。
梅雨は梅で食養生

古くからある医学の考え方で、梅雨は「長夏」と呼ばれ、雨が長く続くことで体内に不要な水分がたまり、胃や脾が弱りやすくなる季節とされています。梅には胃腸を整えたり、体内の水分バランスを維持する働きがあるとされていることから、梅雨を乗り切る食養生におすすめの食材です。
お弁当になぜ梅干し?
お弁当には決まって梅干しが入っていた、という方が多いのではないでしょうか。これは、梅干しの殺菌効果で食材がいたみにくくなるという先人たちの知恵が受け継がれ、梅干しを入れる文化が根付いているのです。ただ、お弁当全体がいたみにくくなるということではないので、保管には十分注意しましょう。
花梅と実梅それぞれの個性
梅の花をめでるだけでなく、様々な加工方法で日本人の生活に深く関わってきた植物。種類は大きく「花梅」と「実梅」に分けることができ、実梅だけでも100品種ほどあるとされています。梅は花も実も見分けるのが難しいですが、ここでは代表的な実梅の花や品種、特徴をご紹介します。

実梅の中で知名度が高く、生産量も多いのが南高梅です。和歌山県の紀州南高梅は高級品とされています。皮が薄く果肉は柔らかいので、ジューシーな食感を楽しめるのが魅力です。
群馬県を中心に、主に東日本で栽培されている品種です。形の美しい実と、繊維が少なく肉厚な果肉を楽しめます。南高梅に比べると、さっぱりとした味わいが特徴。


寒さに強いため、東北地方をはじめとした寒冷地でも栽培されている品種です。酸味が少なく果肉が多いことから梅酒やジャムに向いており、酸味が少ない梅干し作りにもおすすめ。
昔から親しまれてきた古来種で、実は硬く香りが強いのが特徴。奈良県や徳島県などで栽培されています。梅酒や梅ジュース、カリカリ梅などの他、受粉樹としても使われています。

受粉期季節を感じる…梅仕事
「梅仕事」とは、梅が出回る季節に梅を使った保存食を作ること。少し時間はかかりますが、梅から丁寧に作った梅干しや梅酒は格別のおいしさです。梅が収穫できるのは、ちょうど「梅雨」の季節にあたる6月頃ということで、この時期に梅仕事をしておくと、1年を通して自家製の梅干しや梅酒を楽しむことができます。
梅酒の作り方

用意するもの
- 青梅(黄色く熟した梅がおすすめ)・・・1㎏
- ホワイトリカー(35度)・・・1.8リットル
- 氷砂糖・・・1㎏
- 広口ビン・・・4リットル
作り方
- ビンをきれいに洗い熱湯消毒する。熱湯を入れ全体が殺菌できるようビンを振り、完全に乾燥させる。
- 青梅のヘタを取り丁寧に水で洗い、しっかり水気をふきとる。
- ビンに青梅と氷砂糖を交互に入れホワイトリカーを注ぎ密封する。
- 冷暗所に保存し、漬けはじめから10日ほどは毎日、その後は時々ビンを振り中身が混ざるようにする。

梅酒の飲みごろ
漬け込みから3ヵ月ほどでさっぱりとした口当たりに、さらに6ヶ月から1年熟成させるとコクが出てまろやかな味になります。
梅シロップの作り方

用意するもの
- 青梅(黄色く熟した梅がおすすめ)・・・1㎏
- 氷砂糖またはグラニュー糖・・・1㎏
- ビニール袋
- 広口ビン・・・3リットル
作り方
- 青梅のヘタを取り丁寧に水で洗い、しっかり水気をふきとったらビニール袋に入れ冷凍庫で24時間以上凍らせる。
(冷凍した青梅を漬け込むことで梅のエキスが出やすくなります。) - ビンをきれいに洗い熱湯消毒する。熱湯を入れ全体が殺菌できるようビンを振り、完全に乾燥させる。
- ビンに冷凍した青梅と氷砂糖またはグラニュー糖を交互に入れ密封する。
- 冷暗所に保存し、氷砂糖またはグラニュー糖が早く溶けるように毎日ビンを振る。漬け込んでから約7日~10日で出来上がり。
※出来上がったら梅の実を取り出してください。

飲み方
約900mlの梅ジュースの原液ができますので、水やソーダなどでお好みの濃さにうすめてお飲みください。