日本が誇る出汁文化

一人ひとりが「和食」の文化について関心を深め、和食文化の大切さを再認識するきっかけの日となっていくよう願いを込めて、11月24日(いい日本食)は「和食の日」と制定されています。また、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食文化は世界共通の財産となりました。

秋は実りの季節であり、日本の食文化にとって非常に大切な時季です。食について改めて考えてみましょう。

日本の伝統健康に寄り添う食事

日本は豊かな自然と新鮮な旬の食材、知恵とうま味が詰まった発酵食品など、和食に欠かせない多様な素材と環境に恵まれています。これらの滋養に富んだ食材と、米を中心とした栄養バランスに優れた食事構成が和食の特長です。

そんな和食は、「健康長寿食」とも呼ばれています。一汁三菜の主食、主菜、副菜、汁物であるため、1食で5大栄養素を補うことができ、調理方法も蒸す、煮る、焼く、和えるなど油の使用量が少ないため低カロリーです。

また、正月や節分など年中行事とも密接な関わりがあり、自然の美しさや季節の移ろいの表現など、美しい飾りつけも魅力の1つです。そして、和食に欠かせない「出汁」は素材そのもののうま味を引き出すことで減塩にもつながります。

料理の味を左右する和食の命

和食といえば素材の持ち味を生かすことに特徴がありますが、その素材の味を引き立たせるために必要不可欠なものが「出汁」です。出汁が発展した背景には、和食は歴史的に野菜中心であり、脂肪やたんぱく質が少なく味わいが淡泊なものが多かったことが考えられます。淡泊な味わいの素材をより豊かな味わいにするために、うま味が求められたのでしょう。現在では「うま味(umami)」という日本語そのままの形で広く世界の料理人に認識されています。

味覚の発達には、食べ物を口に入れ「どんな味がするのか」「風味や後味はどうか」と感じ、食材本来の味を感じ取れるようにすることが大切。そこで重要なのが「うま味」です。うま味が凝縮された出汁は食育にもとても大きな役割をもっています。

たくさんある!様々な出し汁の種類

出汁には様々な種類があり、料理に入っている他の美味しい食材の風味を際立たせ、引き出す事でより深く、強く、複雑な味を作り出す役割があります。出汁の種類を知って毎日のお料理にお役立て下さい。

一番出汁

伝統的な出汁は昆布とかつおを使って作られる。この2つの材料だけで異なる特徴を持つ様々な種類の出汁を作ることができる。中でも最も重要なのが一番出汁で、最高級の昆布を水につけるか、軽く火にかけてからさっとかつお節を加えて作る。お吸い物など出汁の香りと質が肝とされる料理に使われることが多い。

二番出汁

一番出汁で使用した昆布とかつお節に一番出汁の約半量の水を加え、ゆっくりと煮出すのが一般的。しっかりとしたうま味があり、煮物や味噌汁に適した出汁がとれる。

昆布出汁

昆布出汁は、植物性の藻類の昆布のみからとる出汁。その昆布は北海道を中心に東北の一部にかけて収穫される。

煮干し出汁

かつお節などと比べると、やや魚のくせが強い出汁がとれる。乾物やえぐみのある素材などを煮るとき、または味噌汁やお惣菜などに使う。

精進出汁

魚や肉が禁止されているため、かつお節や獣骨などは使用することができない。昆布や干し椎茸、大豆などの乾物や野菜の皮を干したものを使用する。中でも干し椎茸はうま味の香りが濃厚だが、クセが強いため多く使いすぎると味のバランスを壊してしまうので要注意。

体にもうれしいメリットがたくさん

ここまで出汁の特長や種類についてご紹介してきましたが、料理の美味しさを引き立てるだけではなく、多くの健康効果も期待できます。最後に出汁の4つの健康効果をご紹介しましょう。

まず1つ目が、「満腹感を持続させて食べ過ぎを防ぐ」ことです。昆布や干し椎茸でとった出汁に多く含まれるグルタミン酸には、食後の満足感を長続きさせる働きがあると言われています。毎日の食事に出汁を取り入れることで、間食を抑えて食べ過ぎを予防することができるでしょう。

2つ目が「体を温め疲労改善に働く」ことです。かつお出汁に含まれるヒスチジンやアンセリンといったアミノ酸の成分には、血行不良による冷え症や肩こり、頭痛などを和らげる効果も期待できます。

3つ目が「血糖値の急上昇を抑え、脂肪をたまりにくくする」働きです。昆布にはネバネバした水溶性の食物繊維が多く、出汁にも溶け出しています。この食物繊維には、血糖値の急上昇を抑えたり、脂肪の燃焼を促す働きが期待できます。

最後に4つ目が「心を落ち着かせる」効果です。うま味成分には精神の安定を促す作用があると言われています。ある研究では、かつお出汁を摂取することで、緊張感や不安感などを改善し、精神的なストレスを低減する効果が報告されています。また、昆布出汁に含まれるうま味成分のグルタミン酸を摂取することで、胃の運動が活発化し、食欲が安定。自立神経に良い作用を及ぼすという報告もあります。

出汁を摂り入れることで、毎日の食生活がもっと健康的になります。ぜひお料理の際に意識してみてください。

「和包丁」は和食と切っても切れないご縁

「サムライの刀みたいな切れ味!」と海外でも賞賛される和包丁。和包丁と一言で言っても、「菜切包丁」「刺身包丁」「出刃包丁」など、その種類は30を超えます。なぜ和包丁は種類が豊富かというと、和食はそれだけ食材に対して繊細であるという事です。例えば、マグロ包丁、タコ包丁など、魚介によって専用包丁があるのは、細胞を壊してうま味を逃さないため。また、麵切り、豆腐切り、菓子切りのように、切る食材によって専用包丁があるのは、切り口を潰さず独特の食感を守るためです。