食品を長〜く保つための知恵!保存食について知ろう

当たり前に食べているあの食品も、もともと保存食として考案されたもの!?飽食の時代だからこそ知っておきたい食料保存の大切さをご紹介します。

先人たちの知恵と経験が凝縮されている

お腹が空いたらすぐに食べ物を手に入れられる…当たり前のようですが、人類と食料の歴史を考えた時に、これはまさに革命に他なりません。消費者庁の調べによると日本では、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」が年間で523万トンにも及ぶということが明らかになりました。

今でこそ食品がすぐ隣にありますが、食べることに工夫を凝らし「如何にして飢えないようにするか」をまず考えなければならない時代も存在します。度重なる災害や変化し続ける世界情勢によって、もしかするとそんな事態が訪れてしまうかもしれません。そこで今回は、先人たちの知識と経験が凝縮された保存食を特集します。

まず保存食とは、長期間に渡り常温に置いておいても食べることのできる状態を維持できる食品のこと。例えば日干ししたり、塩を使って水分を抜くことで保存性を高めています。身近なところで言えば、切り干し大根や各種の漬物です。スーパーでは要冷蔵の漬物が多く販売されていますが、塩分濃度の高いたくあんはなんと7年ほども常温保存ができるそう。もともと日本は多湿であるため、こうした保存方法も高度に発展してきました。ただ乾燥させるだけではなく煮干しや鮎の焼き干しは加熱によって内臓まで乾燥させるという工夫がなされています。逆に高野豆腐等は冷凍と解凍を繰り返すことで徐々に水分が抜け、保存に適した状態へと変化していく保存方法です。

また、保存食と言えば忘れてはならないのが発酵。有益な微生物をあえて増やすことで、雑菌の繁殖を抑えるという保存方法です。もちろん味もさらに美味しく生まれ変わり栄養価も高まるため、一石三鳥の技術だと言えるでしょう。

ちなみに日本人にとって特に馴染み深い保存食の代表が梅干しではないでしょうか。その発祥は約2000年前の中国にまでさかのぼります。もともと食品としてではなく疲労回復や食欲増進のための薬として用いられてきました。江戸時代には庶民の間でも梅干し作りが日常の一部となり、現代においては海外でも日本の伝統食として幅広く認知されています。

様々な保存方法をご紹介

日本だけでなく世界中で発展してきた保存食の作り方。伝統的なものもあれば、近年の技術によって誕生したものまで実に様々。ただ、その共通点は雑菌との戦いです。ここでは代表的な9つの保存方法をご紹介します。

  • 塩漬け・砂糖漬け

塩や砂糖に食材を漬けることで水分を減少させる

  • 乾物・凍結乾燥

水分を蒸発させて乾燥させる

  • 燻製

煙中の殺菌作用によって菌の繁殖を抑え、水分を減少させる

  • 発酵

有用な微生物の働きを活発にして腐敗菌の増殖を抑制する

  • 酢漬け・アルコール漬け

酢やアルコールの殺菌効果を利用する

  • 瓶詰め

封入し低温殺菌して雑菌の繁殖を抑える

  • 缶詰

密封し加熱殺菌して、雑菌の繁殖を抑える

  • 冷凍食品

-18℃以下で保存して、微生物の活動を抑制する

  • レトルト食品

機密性、遮光性の高い容器に密封し加熱して雑菌の増殖を抑える

便利なのはわかるけど…健康への影響はないの?食品に含まれた保存料

食文化の発展によって、食品を長く保存するための添加物、保存料が登場しました。近年では「保存料無添加」のように保存料は悪者のようなイメージを持たれますが、法令によって定められた安全基準を厳守することで、人が一生摂取し続けても健康に影響は出ないと考えられています。

代表的な保存料

安息香酸

主に化学合成品が用いられています。水に溶けやすく、各種の微生物に対して増殖を抑える働きがあるとされています。
【主な使用食品】
清涼飲料水、マーガリン、醤油、シロップ等

しらこたん白抽出物

鮭の精巣(しらこ)にある特殊なたんぱく質を取り出したもの。微生物が作るネバネバの発生を遅延させる効果があります。
【主な使用食品】
デンプン系食品、魚肉ねり製品、調味料等

ソルビン酸

ナナカマドという植物の未成熟の実に含まれる成分。現在では化学合成品が用いられています。菌の繁殖を抑える働きがあります。
【主な使用食品】
チーズ、食肉製品、魚介乾製品、佃煮等

プロピオン酸

もともと味噌や醤油、ぶどう酒、パン生地にも含まれている成分。菌類の発育を阻止しますが、酵母菌への影響が少ないことも特徴です。
【主な使用食品】
パン、洋菓子等

ポリリジン

放線菌という細菌の培養液を生成して作られています。多くの細菌の繁殖を抑えるため、幅広く用いられています。
【主な使用食品】
一般食品等

保存料を使用すると保存期間はどれくらい延びる?

加工肉食品の代表であるウインナー、市販のもののほとんどに保存料が用いられています。その理由は、使用していない場合と比較して保存期間が5倍も長くなるというデータがあるから。もし保存料を使っていなかったら、すぐに食べなくてはならず、時期によっては食中毒の恐れもあるのです。

【日本の伝統食】お寿司は食材保存の知恵から生まれた文化だった!

和食の代表と言えば「お寿司」。奈良時代にもその記述が見られるほどの歴史があります。ただ、この頃のお寿司は今とは全く味もカタチも異なったもの。主に魚介類をお米の中に入れ、自然発酵させた食品を「すし」としていたのです。簡単に言えば、お米をぬか床にした漬物というイメージ。つまり、保存食です。「なれずし(熟れ鮨)」と言えば、食べたことのある人もいるかも知れません。今でも全国にその文化が残っており、有名なフナ寿司などがあります。

世界中で発展してきた保存食の代表例

気候や作物、文化を軸にその土地ならではの進化

日本には日本の風土に合った保存食があるように、世界各国も気候やその土地でとれる作物、文化によって保存方法が発展してきました。ヨーロッパでは植物性食材が中心のローマ的食文化と乳製品や肉製品が基本となるゲルマン的食文化が融合されていることが特徴。アフリカではイモ類や穀物が中心となっています。また東南アジアではスパイスを活用した保存方法も広く見られ、アメリカでは先住民の食文化と欧州からの移民の食文化が混ざり合っています。