【書初め】皆様と分かち合いたい書の心

書き初めってどうやって、何を書いているの?とよく質問されます。書道仲間とは「1月の初回のお稽古が書き初めみたいなものですね」と話しています。普段から書に親しんでいるので、特別なことはしないのですが、新年にあたり、皆様にも私の好きな書を分かち合いたく筆を運びました。
(だいにち堂 マーケティング部 書道師範 山本奈穂)

古来の書家の言葉に倣って

書道師範山本が掲げている言葉は、恵風和暢(けいふうわちょう)と読む四字熟語。これは、生けるものの滋養となるような心地よい風が吹いて穏やかな様子のことで、古代中国の書家、王羲之(おうぎし)によるものです。今から1700年近くも前の春の頃、王羲之は人々を招き宴会を開きました。お酒がたくさん入り良い気分になって、心のおもむくままに文章を書き上げ、そこに登場するこの言葉は、お酒だけでなく暖かな風にも酔う様子が現れています。
恵風和暢を選んだのは、この言葉を見習って風のように軽やかに何でも乗り越えていきたいと思ったからです。時には厳しい現実、怒りや悲しみにぶつかることもあるかもしれません。しかし風は、障害物があっても最後は行きたい方向に流れていきます。必ずゴールに着くのだと信じ、困りごとも涼やかな心でひらりとかわして、目標に向かって走り抜きたいものです。
そして、難しく考えすぎず、眉間にシワが寄っていたら伸ばしましょう。王羲之はこの文を下書きのつもりでサラサラと書いて後で清書したのですが、宴会の最中に書いたものを上回る作品にはならなかったそうです。適度に力が抜けた、リラックスした状態のほうが実力を発揮できるのかもしれません。

書き初めといえば煌びやかな着物、というイメージがありますが現実は黒の上下…。服装の美しさより、字の美しさが第一です。

息遣いが伝わる手書きの温かみ

文字を書くと言えばキーボードやボタンを押す時代になりました。それでも、だいにち堂ではお客様よりいただいたお手紙を直筆でお返事したり、宛名に手書きを取り入れたりしています。その理由は、人が書く文字はそこに本当の人間がいるという息遣いを感じさせるものだから。新しい年もそしてこれからもずっと、だいにち堂は、皆様のそばで書をしたためるような近しい存在でいたいと願っております。