「溶けたら無くなってしまう…」そんな儚さも相まって、その精巧で美しい姿に注目が集まる氷アート。最低気温がマイナス10℃前後にもなる真冬に、ここ信州でも氷の彫刻を制作して展示する氷の芸術祭が開かれます。
氷彫フェスティバルって?

松本城で行われる氷彫フェスティバル。35年以上も続く伝統の冬イベントです。氷彫刻家の職人たちが寒い中、夜を徹して氷で彫刻を制作してコンクール形式で腕を競います。氷彫刻家は、長野県内、県外、さらにはなんと海外からも集まり、十数組の職人の作品が松本城をバックに展示。観る人を魅了します。温暖化などの影響で全国的に氷彫刻のイベントが減る中、松本城氷彫フェスティバルは氷彫刻を野外で見られる貴重なイベントです。
氷彫刻の準備
氷の彫刻制作は、松本城の敷地内で行われます。その工程はビックリするほど過酷なもの。敷地内に沢山の氷の塊が運び込まれ、夕方5時から競技がスタート。夜になるとチェーンソーの音が聞こえ始め、作品の完成タイムリミットはそれから12時間後の明朝5時。夜の冷え込みで、歯がガチガチ言うほどの極寒の中、夜通し彫っていくという戦い。その上、タイトなスケジュールでの制作なのだそう。そんな厳しい環境でやらなくてもと観客目線で思うのですが、昼間は暖かさで氷が溶けてしまう。彼ら氷彫刻家たちとは、冷たいフィールドの上で熱き芸術魂を燃やす者たちなのでしょう。
世界レベルの氷彫
氷彫フェスティバルでは全国氷彫コンクールの作品展示と審査が行われます。2020年からは世界大会として国内12チームに加えて、欧州からオランダ、フランス、ベルギーの3チームも出場しています。松本城氷彫フェスティバルは世界的な大会となっているのです。
圧巻の迫力ある作品

完成した氷彫刻は、夜明け前に色鮮やかにライトアップ!夜に光る様はイルミネーションのようです。そして翌朝、日が昇ってからは展示された作品を松本城とともに見て楽しむことができます。今にも空へ飛んで行きそうな翼を広げた躍動感ある作品、龍と虎が威嚇しあい、勢いと迫力満点の作品など、個性的な作品のオンパレード。まるでクリスタルのような美しさに、見入ってしまいます。氷彫刻師による圧巻のパフォーマンスや、大胆で繊細な技を間近で鑑賞できるのがこのイベントの醍醐味と言えます。その他にもプレイベントとして展示されている作品や、子どもたちに人気の巨大な氷の滑り台も出現します。年によって、デザインやテーマが違う氷彫刻が並ぶため毎年通うファンもいるそう。来年の冬は、氷彫フェスティバルを訪れてみてはいかがでしょうか。
なぜなぜ?雪の結晶ができる理由
うっとりするくらい綺麗な雪の結晶。空のはるか上空で、水蒸気が冷やされて「もう水蒸気じゃいられないよー!凍っちゃうよ!」という温度まで低くなると、水蒸気から雪の結晶に姿を変えるのです。
でもなぜ六角形の形をしているのでしょうか。これは、水の分子がそもそも六角形の形をしていて、六角形になると落ち着くという性質があるからなのです。実は雪の結晶は同じ形が2つとないと言われています。この形の違いは、湿度と温度が決め手。落下したり風に吹き上げられたりしつつ形を変えて、六角形の「角」に水蒸気がくっついて、枝が伸びたり、板が成長したりします。条件が少し変わるだけで、結晶の形が変化。雪の結晶とは自然界の繊細な芸術作品だったのです。
長野だけじゃない!全国の雪まつり・氷まつり
- 北海道「さっぽろ雪まつり」
言わずと知れた北海道を代表する冬の人気イベント。北海道だから実現できるダイナミックな大雪氷像の迫力と精巧さを間近で楽しめる雪まつり。
- 秋田県「横手かまくらまつり」
450年以上続く小正月行事で、100基ほどのかまくらに火が灯り、ずらりと立ち並ぶ光景はロマンティック。
- 秋田県男鹿市「なまはげ柴灯まつり」
無形文化遺産の1つ。なまはげが松明を手に、勇ましく雪山から降りてくる様子は泣く子も黙る迫力。
- 新潟県「つなん雪まつり」
約3000個のスカイランタンが舞い、冬の夜空を幻想的に彩ります。花火も打ちあがり、記憶に残ること間違いなし。
- 山梨県「西湖樹氷まつり」
高さ約10mの樹氷のコラボレーションが見事な氷の祭典。青空とのコントラスト、夕暮れの景色が見応えたっぷり。