一枚で心伝える暑中見舞い

年賀状に比べて、暑中見舞いとなるとなかなか書く機会も少ないのではないでしょうか。
暑中見舞い用のくじ付きはがき「かもめーる」も一昨年を最後に終了してしまい、もの寂しさを感じます。けれども、連日の暑さにまいっているなか、親しい人からの一枚の便りが心も体も力づけてくれるもの。今年の夏ははがきにギュッと想いをこめて暑中見舞いを送ってみませんか。

飛脚からSNSまで。暑中見舞いの歴史

もともと、お盆は里帰りをし、先祖の霊を迎え、心をこめた品を捧げるものです。江戸時代からは親族やお世話になった方を訪問し、贈り物とともに挨拶をする習慣となりました。しかし、遠方で直接会えないところには、飛脚に手紙や贈り物を届けさせるようにしたのです。これが暑中見舞いの始まりと言われています。
さらに明治時代以降、郵便制度が発達すると手紙のやり取りが活発になりました。暑中見舞いにはがきを送るという習慣は、1950年6月に郵政省(当時)が初めて「暑中見舞用郵便葉書」を発売してから根付いていきます。1986年から2020年までは年賀状と同じく当たりくじがついた「かもめーる」が広く利用されていました。
現代では郵便よりもインターネットを使うことが多くなり、暑中見舞い用のSNSスタンプもある時代です。それでも、猛暑で体調を崩しやすい時期に相手を気遣うという目的は、ずっと変わらないものなのです。

いつ出す?意外と早い「秋」の訪れ

暑中見舞いを出し始める時期は、丑の日がおなじみの「土用」の期間からとも、7月7日頃の「小暑」からとも言われます。そもそも、最も暑い時期に相手の体調を気遣う役割がありますから、暑くなり始める梅雨明け頃から送るのが目的にかなっていると言えます。
では、いつまでに送れば良いかというと、これははっきりと決まっていて立秋の日まで(今年は8月7日)です。これを過ぎたら「残暑見舞い」として送ります。思ったより暑中見舞いの期間は短いものですね。暑くなり始めるとあっという間に立秋を迎えるので、準備は早めにしましょう。

きまり事よりも素朴な心で

いざ書こうとしてみると、どんな言葉遣いにするか、形式やマナーが気になるかもしれません。けれども、受け取った方が喜び力づけられることが一番のマナーです。お手持ちの絵葉書や、旅先で買ったポストカードにさらっと一言添えるだけでも、相手を思う気持ちを伝えてくれます。

時候の挨拶は身近なできごとから

礼儀正しい時候の言葉も様々にありますが、親しい間柄では、ユーモア感を出してみましょう。

相手、ご家族のことを思う気持ちを

まず相手のことを先に、お子様やお孫様の成長や、楽しい趣味の話など前向きな話題で今どうしているかたずねましょう。

こちらの様子を報告

自分も元気でいると、相手にホッとさせるような様子を伝えます。

相手の健康を願う

「お元気で」と健康を願う言葉や、次に会う日までお互い健やかに「また会いましょう」の願いで締めても。

気楽に筆の赴くまま…♪こんなお便りはいかが?

●自分の話よりも先に相手の安否を気遣います。

●「冷たいものがおいしい」「入道雲がすごい」など身近な事柄を挨拶に。

●旅行に出かけた、趣味を楽しむなど自分も元気に過ごしている様子を。

●健康を願うとともに、今度は顔を合わせたいと伝えるとぐっと親しく。

【簡単ポイント】プチ美文字講座

ペン字師範の山本です。大人の習字は、教科書のような整った文字というよりも、それぞれの個性や味を活かしつつ上達されていく方が多いですね。ちょっとしたポイントで、受け取った方に心が伝わる文字を目指しましょう。

書きやすい筆記用具

弘法筆を選ばず、と言いますが、私たちは筆を選びましょう。軸に入っている芯が少し太い、ジェルタイプのボールペンが手軽でおすすめです。文房具店やコンビニエンスストアに100円程度で置いています。一般的な油性のボールペンに比べて線の強い・弱いが出やすいので、文字がぐっと引き締まるのです。

やわらかめの下敷き

思い描いた字のイメージ通りに手が動くことも大切。かたい机の上に直接紙を置いて書くと、氷の上でうまく歩けないのと同じでつるっと滑ってしまい、思わぬ方向にペン先が走ってしまいます。ペン習字用の軟質プラスチック下敷きや、しわや凹凸のない厚手の紙を敷いて、紙がしっかりとペン先を捕まえてくれる状態にしましょう。

中心線を意識する

1文字ずつきれいに書くというよりも、文字の並べ方のバランスをとる方が、全体として整って見えます。行ごとの中心に薄く鉛筆で線を引いて、中心線に均等に文字が乗るように心がけましょう。鉛筆の線はペンのインクが乾いてから消せばよいのです。