奈良時代から続く行事「端午の節句」

5月5日と言えば「こどもの日」。別名、端午の節句として知られています。しかし「端午とは?いつから始まったの?」など、由来や歴史は忘れられがちになっていないでしょうか?

古代中国にまでさかのぼる歴史

まず端午の「端」という字に着目してみましょう。これは「はじめ」という意味であり「端午」とは5月最初の「午(うま)」の日のことでした。それが午(ご)と読むことから、奈良時代以降5月5日が端午の節句として定着したとされています。また、中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜紀元前221年)が起源だという説もあります。当時、人望の厚い政治家が周囲の陰謀によって川に身を投げました。その命日である5月5日を厄除けの祭りとすることが中国全土に広まり、奈良時代に日本へ伝わったともされています。
時は流れ、江戸時代に入ると勢力の中心が貴族から武家に移ります。すると、厄払いの菖蒲の葉を剣に見立てる風習と結びつくようになりました。端午の節句は「菖蒲の節句」とも言われるようになり、武を重んじる尚武(しょうぶ)とかけて男の子の成長と一族繁栄を願う行事に発展していきます。武士が鎧兜を縁側に飾り虫干しする時期とも重なり、これが五月人形を飾る風習の原型だともされています。

菖蒲が重宝される真の理由とは?

さて、そんな端午の節句とは切っても切り離せない菖蒲。これをお風呂に浮かべる菖蒲湯はいつ頃から始まったのでしょうか。
実は、古代中国では菖蒲を薬草とし、屋根に吊るして魔除けにしたり、刻んでお酒に混ぜて飲むという習慣があったそうです。それが日本に伝わり、室町時代にはすでに菖蒲湯が親しまれていたとされています。また、菖蒲酒(あやめざけ)や菖蒲刀(あやめがたな)など、厄払いの習慣も根付いていたそう。
菖蒲にはテルペンやアザロン、オイゲノールといった特有成分が含まれており、これらを皮膚や呼吸器から吸収することで、疲労回復やリラックス効果が期待できます。つまり菖蒲湯は、これから夏を迎え暑くなり始める時期の生活の知恵でもあったのです。

英雄・豪傑への願いを込めて…金太郎が好まれる理由

五月人形と言えば金太郎。健康的な体に金の腹掛け姿、力持ちで鉞(まさかり)を担ぎ、熊などの動物を伴っているため、武や強さの象徴とも言えるキャラクターです。また大きな器と優しさも持ち合わせていることから、江戸時代からほとんどの家で飾られ、非常に人気が高かったそう。

桃太郎も大人気

桃は古来から邪気を払う植物とされてきました。桃から生まれ、鬼を退治した桃太郎の人形には、魔除けや健やかな成長という願いが込められています。

魔除けの神様『鍾馗(しょうき)』

中国の神様である鍾馗は、学業成就や守り神として飾られています。

日本ならではの初代天皇

神武天皇も五月人形として有名。武勇と平和の象徴という意味が込められています。

類い希な強さと大きな器

武蔵坊弁慶を負かして家臣にしたという牛若丸も五月人形として人気です。

竜となるまで昇り詰められるように「屋根より高い鯉のぼり」

こどもの日には全国各地の空に鯉が泳ぐ景色が見られます。そんな『鯉のぼり(鯉幟)』の始まり、それは昔、男の子が生まれると幟(のぼり)や旗指物(はたさしもの)を掲げてお祝いしていたから。最初は吹き流しだけだったのが、滝を登り切った鯉は竜へと姿を変えるという故事にちなんで、鯉のぼりが生まれました。
群馬県館林市の「こいのぼりの里まつり」では2005年に5,283匹の鯉が掲げられ、世界記録に認定されています。

鯉のパワーを体に摂り入れる!?長野県の鯉料理

だいにち堂のある長野県は鯉の養殖が盛んな地域。鯉の身を輪切りにし、味噌で煮た『鯉こく』という料理が有名です。薬用魚としても重宝されてきた鯉の栄養成分を体に摂り入れ、竜のようなパワーを体感してください!

端午の節句に食べるものの意味

タケノコ

竹にあやかってすくすくと真っ直ぐに育ってほしいという願いを込めて、端午の節句にはタケノコ料理が定番になりました。

ちまき

元々は厄を払う楝樹(れんじゅ)という植物の葉で巻かれていました。それがいつしか茅(ちがや)の葉が使われ、『ちまき』と呼ばれ始めたそう。

柏餅

端午の節句の名物の代表と言えば、柏餅。柏は新芽が育つまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄に繋がるとされて縁起が良い植物です。

柏餅やちまきは地方によってその形は実に様々。柏餅と言っても柏を使わず他の植物の葉で代用したり、鹿児島や宮崎などでは灰汁(あく)に漬け込んだ餅米を竹の葉で包んだものを『ちまき』と言い、親しまれています。

ご自身の五月人形、しまったままになっていませんか?

子どもの頃には目にする度に胸をときめかせていた五月人形。しかし大人になった今、どこにしまっているのかも忘れてしまうことも…。
飾らなくなった五月人形は、必ずお寺や神社に供養してもらいましょう。他に欲しい人がいるからと言って譲ることはオススメできません。長年、災いを代わりに受けてくれた人形です。人に渡すということは、その厄まで一緒に移動してしまうのです。