警戒すべきは花粉だけじゃない!黄砂とPM2.5に要注意

春のくしゃみや咳、鼻水の原因と言えば花粉…ですが、それ以外にも健康に影響を与えるものがあります。それは黄砂やPM2.5です。「中国の方から飛散、外出には注意」などとニュースになることも多いのですが、一体何なのかご存知でしょうか?

砂漠の砂や土が飛散する「黄砂」

黄砂は、読んで字の如く黄色い砂による環境被害のこと。アジア中央のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠、モンゴルの黄土高原などの乾燥地域の砂や土が風によって数千メートルまで巻き上げられ、偏西風によって日本にまで飛来します。「ひどい砂埃のようなもので、大した事はない」と思っている人もいるかもしれませんが、その被害は甚大。生活への影響は洗濯物が外に干せなかったり、車が汚れる程度では済まないのです。

黄砂は発ガン性物質を増加させる

まず黄砂が飛来すると、発ガン性物質として有名なダイオキシン類の大気中の濃度が上昇。通常時の2倍も人体に取り込まれてしまうというデータが出ています。また、細菌やカビが最大で約20倍も増えるという研究結果もあり、健康に深刻な悪影響を与えると考えられているのです。

経済にも大打撃!黄砂はまさに天災

黄砂は、健康だけでなく経済にも大きな打撃を与えます。特に影響が出るのが農業ではないでしょうか。激しい黄砂はビニールハウスの上に降り積もり、遮光障害を引き起こします。さらに黄砂が雲に入ると、茶色い雨を降らせ土壌のバランスを崩壊させることで、農作物は不作となってしまうのです。また、結果として野菜の価格が暴騰するため、外食産業にとって死活問題となってしまうのです。
他にも、飛行機の運行が困難になったり、テレビ放送などの電波を乱反射させ、受信障害や異常伝播の原因になることもあります。精密機械を製造している工場では、黄砂の時期は不良品が多発し、大きな損失を被ることもある非常に厄介な災害と言えるでしょう。

風に乗って世界を黄色く染める黄砂。わずか1週間で中国からアメリカへ

黄砂が巻き起こす被害はまさに世界規模。「砂が太平洋を越えてアメリカ大陸まで?」と驚くかもしれませんが、砂漠の砂の粒子はなんと赤血球より小さく、巻き上がったらどこまでも高く上昇し、気流とともに世界を巡ってしまうのです。
発生した黄砂は地球を回る衛星で監視されており、気象情報などで注意喚起されます。中央アジアで巻き上がった黄砂粒子は、わずか1週間ほどで北アメリカ大陸へ到着し、欧州アルプスにまで到達したという記録もあるほどです。

文明の発展が原因の大気汚染『PM2.5』

黄砂とともに中国地方から飛来すると話題になるのがPM2.5。PMとはParticulate Matter(粒子状物質)の略で、2.5マイクロメートル以下の非常に小さな物質の総称です。黄砂が自然の砂や土であるのに対し、これは主に人工物。工場や自動車などから排出され、大気汚染の原因になると問題視されています。日本国内で発生するPM2.5の濃度は、自動車排気ガス規制などによって年々減少傾向にありますが、呼吸器系や循環器系の不調が気になる人は、PM2.5が増加する春は特に注意が必要です。

髪の毛の30分の1の大きさ。超微粒子が肺の奥まで入り込む

大気汚染の原因となるPM2.5ですが、人体にはどういった影響を及ぼすのでしょうか。その恐ろしさは、粒子が非常に小さいというところ。なんと髪の毛の30分の1程度しかありません。そのため、呼吸とともに肺の奥深くまで入り込み、そのまま細胞に浸透。血液と混ざり合い、全身へ行き渡ります。
最も大きな影響を受けるのが呼吸器系です、肺や気管支に沈着することで気管支炎や喘息の原因となり、肺気腫(肺の細胞が破壊されてしまう疾患)を引き起こすこともあると懸念されています。また、循環器系への悪影響もあると考えられており、動物実験において不整脈等、心機能への負担も報告されています。
下のグラフは、福岡市のPM2.5の飛散量。西日本方面は中国大陸から飛んでくるPM2.5が多いとされていますが、環境基本法で注意が必要とされる量を超えることは少なくなりました。しかし、この問題は世界規模です。一人ひとりが「地球を守る」という意思を持つことこそ、本当の意味での解決につながるのではないでしょうか。

外敵をブロックするためのマスク選び。N95がキーワード

黄砂やPM2.5から身を守るためには、できるだけ屋外にいる時間を減らし、屋内での窓の開閉を控えるのが効果的です。また、外出の際は、必ずマスクを着用することが大切です。マスクの種類は大きく分けて2種類。1つ目が咳やくしゃみなど、人から排出される微生物などの粒子を外に出さないようにするもの。周りの人に風邪を移さないために着用するマスクです。2つ目は、逆に外敵から着用者を守るためのものです。マスクが顔に密着するような構造になっているのが特徴です。

  • サージカルマスク
    一般によく販売されているマスク。咳などによる飛沫感染を防ぐように設計されており、一般的に5μmまでの粒子をブロックできるように設計されています。PM2.5はさらに粒子が小さいため、マスクを通過してしまいます。
  • N95マスク
    厚生労働省も推奨するN95という規格で作られているマスク。顔の周りにしっかりフィットし、0.075μm以上の微粒子を95%カットすることが認められています。密閉性が高く、少し息苦しく感じるかもしれませんが、黄砂やPM2.5をブロックするためには、N95規格のマスクがオススメです。