想像以上に優秀!?元気の源「人参」

古くから栄養価の高い食材として親しまれている人参。季節によって北海道から九州まで産地を変えながら通年作られるため、1年中スーパーなどで見かけます。人参は肥大した根を食べるいわゆる根菜で、私たちの体に欠かせないβカロテンなどの栄養成分が豊富。そんな人参に秘められた栄養とパワーに迫ります。

人参のはじまり

日本での人参のはじまりは、奈良時代に伝わった「朝鮮人参(オタネニンジン)」と言われています。多くの栄養素を含むため当時から重宝された食材でした。これがいわゆる「高麗人参」です。高麗人参の歴史は古く、2000年ほど前に書かれた中国の古典書に記述されており、秦の始皇帝も愛用していたとのこと。
日本では江戸時代の頃から栽培がされ始め、徳川家康が愛用していたという話もあります。この高麗人参、当時は一般庶民には手の届かない超高級食材でした。やがて16世紀になり、西洋から中国を経て渡来したのが現在私たちがよく目にする「人参」の品種です。

栄養たっぷりな人参

人参はなんといってもβカロテンが豊富なのが特徴。緑黄色野菜の中でも特に多く含んでおり、βカロテンは体内に取り入れるとビタミンAに変化します。また人参の葉にはミネラル、特にカリウムやカルシウムが豊富でビタミンCもたっぷり。これらの栄養素は根の部分に含まれないので葉付きの人参を見つけたら葉も一緒に食べると良いでしょう。ちなみに、人参の英名「キャロット」がカロテンの語源になっています。

何色が好き?カラフルな世界の人参

人参と言われてまず思い浮かぶのは橙色の姿でしょう。ですが世界に目を向けると、白、橙、紫、黒(濃い紫色)などの人参があり、中には外側が紫色で内側が橙色という珍しい品種も。また、色によって栄養成分が異なるのが面白いところです。金時人参に代表される赤色はリコピン、紫人参などの紫色や黒色はアントシアニン、橙色はカロテンやビタミンCが豊富で甘みがあります。

西洋系と東洋系、出身地で違う人参

多様な色と品種がある人参ですが、主に原産地から西洋系と東洋系に分けることができます。
西洋人参はヨーロッパ原産で、日本人に馴染み深い五寸人参が主流です。東洋系に比べ太いのが特徴。小型のミニキャロットも人気があります。
東洋人参は細くて長いシルエットが特徴です。西洋系に比べて、人参特有のニオイがありますが、甘みが強く煮崩れしにくいため、日本でもおせちなど和風の料理によく使われています。特に金時人参は「京人参」とも呼ばれる京野菜の1つ。しかし、東洋人参は日本の気候では栽培しにくいため、今では国内で栽培している人参のほとんどが西洋系です。

生で食べるともったいない?

生の人参にはビタミンCを破壊する酵素「アスコルビナーゼ」が含まれるので、そのまま食べるとせっかくのビタミンCが失われる可能性があります。そこで酢や柑橘系などの「酸」と一緒に摂取することでビタミンCの破壊を予防できます。また、人参の栄養素は表面の皮と葉の部分に多く含まれるので、皮も一緒に食べるのがおすすめです。皮と葉に含まれるカロテンの量は、なんと通常私たちが食べている「根の中心部分」の2倍以上とも言われています。油で炒めて食べると栄養素の吸収率もよくなりますので、沖縄料理の「人参しりしり」などにして食べるのもおすすめです。

栄養が多い人参の選び方

  • 見た目をチェック
    丸みがあり、全体的に太く艶の良い物を選びましょう。先が細い物、表面に凸凹があったり荒れている物は、甘みが少なく味も落ちます。また色が濃いものほどβカロテンが豊富です。
  • 葉付きのものは新鮮な証
    葉が付いているものはとれたての証。しかし、葉を付けたままにしておくと葉に栄養がどんどん奪われてしまいます。購入したらすぐに葉を切り落とし、別々に保管しましょう。
  • 葉が付いていた断面をチェック
    葉を落とした断面が小さい物は、芯の部分が細く繊維質も少なめで柔らかいです。一方断面が大きいものは、葉が付いていた状態が長く葉に栄養を取られてしまっているため、味が落ち栄養価も少なくなります。更に断面が黒くなっている物は古いものなので注意しましょう。

栄養9倍!?驚異の黒参

高麗人参(白参)は蒸して乾燥させるほど栄養価が高まる特徴を持っています。全く蒸さない白参に比べて、3回蒸して乾燥させると「活力や美容」に働く主要成分サポニンが増加。9回繰り返すことで黒高麗人参(黒参)になるとサポニンの量がさらに増え、なんと特有成分ジンセノサイドは約9倍!高麗人参を大きく上回る栄養価なのです。