暑くないのに汗をかく?人体の不思議

夏の訪れとともに気になるのが「汗」。汗っかきな方だと、暑い日はタオルやハンカチを常に持ち歩いていないとダメというくらい、体から滴り落ちる汗に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
ですが、そんな汗の原因は暑さだけではないかもしれません。

汗を出す2つの汗腺

暑くもないのに汗をかいたという経験は誰しもあると思います。例えば、緊迫した試合を観戦したとき、大勢の前でプレゼンテーションを行うとき、今の季節は肝試しやホラー映画を見たときに手のひらや額、ワキの下などに、汗をかいたことはないでしょうか?このように緊張や焦り、不安、驚きといった精神的なことがきっかけとしてかく汗は、暑いから出ているというわけではありません。

ではなぜ暑くもないのに汗をかくのか?それは汗が出る汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺という2種類が存在し、それぞれに汗の性質や汗を出す仕組みが異なるためです。

エクリン腺

エクリン腺は皮膚の表面から浅いところに位置し、ほぼ全身の体表面に分布しています。主に体温調節のために汗を出す汗腺で、分泌される汗はほぼ水分のため無臭です。

アポクリン腺

一方、アポクリン腺は体の限られた部分にあり、特にワキの下に多く分布し、毛根に開口部があります。そのため、アポクリン腺から出る汗は白く濁っていて、脂質やタンパク質などニオイの元となる成分を多く含んでいます。

汗をかく3つの要因

汗が出るきっかけとなるのは、体温調節のほか、緊張したときや驚いたときなどの精神的なもの、そしてからい食べ物など味覚からくる3つがあります。

温熱性発汗

体温が上昇した際に汗をかくことを温熱性発汗といいます。体温の適温である36.5℃〜37℃前後よりも温度が上がると脳の視床下部というところから、体温を下げるように指令が出て自律神経の交感神経を通して汗腺へ伝わり、全身から発汗し気化熱を放熱することで体温を下げます。手のひらや足の裏を除く、全身から持続的に発汗し、暑い時に激しい運動を行うと、1時間に2リットルにもおよぶ汗をかきます。

  • 汗をかく部位:手のひら・足の裏を除く全身
  • 汗腺の種類:エクリン腺

精神性発汗

人前に出て緊張したとき、驚いたときなど、精神的な変化に応じて出る汗です。精神性発汗のメカニズムは詳しくはわかっていませんが、精神性発汗で手足から汗が出る理由としては、人間がかつて木の上で生活していた頃、敵から逃げるときに瞬時に逃げられるよう滑り止めの役割をしていたと言われています。

「手に汗を握る」といった言葉としても残っているように、汗が出る部位は手のひら、足の裏、ワキの下など限られた部位で、短時間に発汗するのが特徴です。

  • 汗をかく部位:ワキ・手のひら・足の裏など局所的
  • 汗腺の種類:エクリン腺・アポクリン腺

味覚性発汗

唐辛子や香辛料の効いたからいものを食べたときに顔面を中心にかく汗です。味覚の刺激によって反射的に起こるもので、食べ終わると自然と汗も引いていくのが特徴です。特にカプサイシンという唐辛子に含まれる成分が交感神経を刺激することで発汗するとされています。

からいものを食べると体が温まるため、温熱性発汗も同時に生じていると考えられるでしょう。

摩訶不思議!?人体の仕組み

緊張症でワキや額に冷や汗をかきやすい人は、胸や胴体を圧迫すると汗を抑える効果が期待できます。これは半側発汗という体の条件反射の1つで、圧迫した側と反対の側の発汗を抑えられるという現象のことをいいます。

半側発汗を利用して一時的に汗を止めることが可能で、利用法としてよく知られているのが芸者の高帯です。舞妓さんは胸の高い位置で帯を結ぶことで、上半身を圧迫し顔の汗を抑えてお化粧の崩れを防いでいるのです。

商品として汗止め帯やベルトが販売されているので、汗をかきたくない特別な時など事前に対策をしてみるのも1つの方法です。

【ちょこっと雑学】顔文字の汗はマンガの汗が原点だった?

メールで使う顔文字では汗として「;(セミコロン)」が用いられます。例えば、恐縮さや苦笑いを表す(^^;)や、「うーん…」という当惑を表す(-_-;)。「ええっ、やばい!」という驚きや焦りを表す(;゜Д゜)や、「ひえ〜っ」「ギャーッ」と激しく動揺しているときは(>< ;;) (*0*;;;)など。

この汗マークの元になっているのは、日本のマンガで使われる「し」の字に似た形の模様だといわれています。汗があることで喜怒哀楽を越えた繊細な心境を表現できるのかもしれませんね。