いま大注目の「プラズマローゲン」とは?

歳をとればしみ・しわが増え、髪は白くなり、眼は老眼になっていきます。あらゆる部位は老化していき、脳も例外ではありません。そこで、今回は「うっかり…」「ぼんやり…」に焦点を当てご紹介します。まずは最近の研究で見つかった成分「プラズマローゲン」をお伝えします。どういった成分なのか?どういう働きをしているのか?「プラズマローゲン」を通じて、脳の仕組みを考えてみましょう。

そもそも脳が老化するとは?

人間の脳は大きく「大脳」「小脳」「脳幹」に分けられています。その中でも大きな部分を占めているのが「大脳」です。大脳は物事の認知や判断から、運動、思考、感情など人間にとって大切な働きを持っています。

さらに大脳は脳の前方にある「前頭葉」、上の方にある「頭頂葉」、後方にある「後頭葉」、側面にある「側頭葉」という4つの部位に大別できます。それぞれが異なる役割を持ち、お互いにネットワークを介して繋がり、人間が健康的に生活できているというワケです。

これら脳の中には、数十兆個もの神経細胞が詰まっています。この神経細胞同士は神経繊維でつながり、前述したネットワークを構築しているのです。

ところが歳をとると、神経細胞が壊れたり、ネットワークの力が弱まったりし、物事を記憶・判断する機能が衰えます。その結果「うっかり」や「ぼんやり」が起きてしまうのです。「今日食べたものなんだっけ?」「人の名前が思い出せない…」などは重い病気のサインではなく、自然と起こる脳の老化現象なのです。

近年の研究で発見「プラズマローゲン」

体の衰えを研究していくなかで、近年とある成分が注目されてきました。それがプラズマローゲンです。この言葉を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。

プラズマローゲンとは、ほとんどの動物の体に存在するリン脂肪の一種で、人間の体の中にもともとある物質です。非常に強いバリア機能を持ち、その力によって体の若々しさを保ったり、活動するうえで欠かすことのできない大切な役割を果たすとされています。そして、研究により、さらに大きな働きがあることがわかりました。それこそが、脳での働きです。

リン脂肪は体内にある天然の成分で、脳内に多く存在しています。脳内の脂質の割合を見てみると、約半分の50%をリン脂肪が占め、その内の約20%がプラズマローゲンであることがわかったのです。

「プラズマローゲン」は年齢とともに減少する

脳内の若々しさを保つプラズマローゲン。この発見は雑誌やテレビでも取り上げられ、これから目にする機会も増えてくるかもしれません。まさに世紀の大発見です。

ところが、このプラズマローゲンも、やはり加齢には勝てないことがわかっています。なんと年齢とともに体内から減少していってしまうのです。60代になると20代の頃に比べて約40%も減少してしまうという研究結果もあります。

さらに研究では、ある仮説が浮かびました。プラズマローゲンはもともと、人間の体内に存在する、細胞内部の小器官「ペルオキシソーム」という、いわば「生産工場」でつくられている成分です。「うっかり…」「ぼんやり…」がある方を調べてみると、この生産工場の稼働率が落ちたか、完全に閉鎖してしまっている状態にあると考えられました。そこで、外からプラズマローゲンを補ってあげることが必要になるのです。

摂るなら王様級の働き「ホヤ貝」

当初、プラズマローゲンが豊富な食材は、ホタテや鶏もも肉が一般的でした。ところが、これらの食材から摂れるものよりも、もっと効率的なプラズマローゲンを持つ食材が近年見つかったのです。それこそが、ホヤ貝です。

ホタテや鶏ももよりもプラズマローゲンの含有量が多く、ホタテの約4倍もあります。しかも、単に含有量が多いだけではありません。ホヤ貝に含まれるプラズマローゲンは他の食材のそれとは違い、人間の脳内に存在するプラズマローゲンと構造が似ていることが大きな特徴です。

その構造とは「DHA・EPA」を豊富に含んでいる点にあります。なんとホヤ貝のプラズマローゲンにはホタテの約92.1倍!鶏もも肉の約15.4倍!ものDHA・EPAを含んでいることがわかりました。DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)は健康増進において世界的に注目されており、WHO(世界保健機関)やFDA(米国商品医薬局)も摂取を推奨している成分です。その学術論文数は、近年急激に増加しています。

おさらいしますと、ホヤ貝は、脳にあるプラズマローゲンと似た健康に働くDHA・EPAを持った構造のプラズマローゲンを多く含んでいます。まさに「プラズマローゲンの王様」と呼べるでしょう。ホタテや肉類でも摂取できますが、ぜひ、ホヤ貝のプラズマローゲンに注目して生活してみましょう。

【生き物図鑑】ホヤ貝ってどんな貝!?

デコボコした真っ赤な見た目。一見すると植物の実のようにも見えます。ホヤ貝は名前に「貝」とつくものの、実は貝ではありません。ホヤ貝は脊索動物(せきさくどうぶつ)の一種で、簡単に説明すると背骨を持つ生物と近縁の関係にある海産動物とされています。つまり、私たち人間と遠い親戚にもあたるそうです。

その見た目から「海のパイナップル」とも呼ばれるホヤ貝は、非常に強い生命力が特徴です。決して大きくはない体に反し、1日1トンもの海水を飲み込み、大量のプランクトンから多くの栄養を摂っています。そのため、周辺では牡蠣などが育ちにくいと言われているほどです。