味を感じる「味覚」のメカニズム

お肉が好き、ケーキが好き、納豆が好き…そんな食べ物の好み、当たり前のように感じますが味の正体はなかなか知られていません。そこで、味を感じる五感の一つ、不思議な「味覚」に関してを特集します。

味を感じる受容器官が舌の上に存在している

味を感じる部位、それは当たり前ですが舌です。まず、舌の上に食材などをのせると口の中から唾液が分泌され、分解され始めます。この時に、舌に存在する味蕾(みらい)という味の受容器官が、食材に含まれている味の源である科学物質をキャッチ。ここでどんな成分が含まれているかを分析し、神経を通して脳へと伝達されます。そして、その情報を元に脳は味の種類を感知するという仕組みになっているのです。通常、味蕾は約10日間で生まれ変わり続けており、年齢によって減少傾向にあることがわかりました。また、味蕾は舌の上だけではなく、上あごの後方や咽頭部、食道などにも広く存在していることが明らかになっています。

味を構成する基本的な5つの要素とは

食材によって千差万別な味ですが、今までは大きく分けると4つしかないと考えられていました。甘み、酸味、塩味、苦味…しかし、これだけではどうしても説明ができない味があります。それが旨味です。この発祥は日本、1908年のことです。旨味物質のグルタミン酸ナトリウムが発見され、旨味も基本的な味の1つだという認識が広まりました。ただ、欧米諸国で認められたのはごく最近。英単語で旨味はそのまま「Umami」と表記されます。
甘味、塩味、旨味の3つは、糖質やたんぱく質、ナトリウムやカリウムなど生命維持に欠かせない成分の象徴とも言えます。そのため、子供の頃からも本能的に求めてしまう味だと言えるでしょう。酸味や苦味は、腐敗や毒劇物を表す味でもあるため、美味しいと受け入れられるようになるまで、時間と経験が必要です。
また近年では第6の味を感知する受容体があることがわかりました。それは「脂肪味」です。感じ方に大きな個人差がある味で、鈍感な人は脂肪を摂り過ぎる傾向にあることがわかっています。

舌の場所で感じている味が分かれている?

舌の場所で感じる味が違うという話、聞いたことはありませんか?例えば、舌先は甘味に敏感で、舌の奥は苦味を感じる。20世紀までは広く信じられてきましたが、21世紀に入ると舌全体の味蕾で味を感じ取っており、舌の場所によって違いがないことが判明しました。実は、味蕾1つに対して5つの味を感じる機能が備わっており、舌のどの部分でも同じように何味かを判断することができます。

甘味

生きるために必要なエネルギー源を示す味。甘みを感じるとエンドルフィンやセロトニンという神経伝達物質が分泌され、リラックスして幸せな気持ちになれることが証明されています。

塩味

高血圧などの生活習慣病の原因とされがちですが、細胞内外の浸透圧を調整するのに欠かせない役割を担っています。また、脳から各器官に送る信号にもナトリウムは重要です。

旨味

旨味には食事の美味しさを引き立てるだけではなく、食べ過ぎ防止効果もあることが証明されています。旨味たっぷりのスープを食事の最初に飲むことで、自己抑制関連の脳の領域が活性化します。

酸味

食欲を増進させ、疲労回復効果もあるとされている酸味。また近年の研究では長期的に酸味が強いものを摂ることで高めの血圧を抑える働きがあることも明らかになりました。

苦味

もともと毒の味として認識されます。そのため食経験が少ない子供にとっては大敵だと言えるでしょう。反面、苦味の成分は自律神経を調整し、ストレス解消に役立つと言われています。

辛味

辛味は上の5つとは違い、痛みや温度を感じる受容体で感じる味です。発汗作用や食欲増進効果の他、抗菌作用など衛生面をアップさせる機能も期待できます。

渋味

ワインや緑茶に含まれる渋味も味覚で感じる味ではなく、口腔内の粘膜を収斂させることによって生まれる感覚です。有名なのがポリフェノールという成分で、様々な健康機能が報告されています。

味を視覚化できる現代のテクノロジー

「このスイーツ、もっと甘い方が…」「いや甘すぎだよ」そんな感じ方の差が大きい味覚。基準がないため今まで非常に曖昧なものでした。しかし近年では、日本の大学とベンチャー企業との協力により、これを視覚化することに成功したのです。例えば、ある食品メーカーがこの味覚センサーを使って自社商品のドレッシングのラインナップを調査したところ、味の方向性に偏りが見られることが判明しました。そして新商品開発にも広がりが見えるようになったそうです。また、味覚を視覚化する優位点として、子供の好き嫌い対策にも有効です。下のようにピーマンの味のチャートとクリームチーズを合わせることで、非常に食べやすい味になるなどに活用することができます。

年齢を重ねると好みが変わる!大人味の理由とは?

年齢を重ねると食の好みも変わるものです。昔はサンマのワタの部分が苦くて嫌いだったのに、いつの間にかクセになっていたということもあるはず。その代表がブラックコーヒーではないでしょうか。奥歯を噛み締めてしまうような酸味と苦味…子供は大の苦手でしょう。しかし、大人になってそれが美味しく感じてしまう人がいるのも事実。この理由として、まず考えられるのが経験です。苦いイコール毒物、酸っぱいイコール腐っている、これを経験によって「食べても大丈夫なもの」だと認識します。そして、コーヒーを飲んだ時のリラックス作用を体感し、思考が徐々に変わることで好みが変化してくるのです。まさに酸いも甘いも知った大人味だと言えるでしょう。